従業員さんを採用される際、履歴書や職務経歴書を拝見し、また面接をするなどでその方の職務遂行能力を判断することが多いかと思います。
しかし、採用後に実際に勤務してもらったところ、想定していたよりも能力が劣っていたということもよくあるものです。
そのため、当初の一定期間を「試用期間」として働き具合をチェックし、特に問題がなかった場合に正式採用する運用をされている会社さんが多いのではないでしょうか。
ところで試用期間にはいろいろ注意すべき点があります。
そこで今回は、試用期間の注意点について取り上げたいと思います。
一般的に試用期間とは、企業が人材を採用する際に社員としての適性を判断するために用いられる制度のことをいいます。
採用する際にペーパーテストや面接を行うことが多いですが、それだけではなかなか本人の適性を見極めることが難しいため、万一のことを考えてこの制度を設けることが多いです。
試用期間中も雇用契約は成立しているのですが、「解約権留保付き雇用契約」という扱いであり、試用期間後の正規採用と比較すれば雇用契約を打ち切りやすいという性質があります。
解雇予告とは、従業員さんを解雇する場合には30日以上前に予告するか、又は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならないという制度のことをいいます。
これは労働基準法に定められております。
試用期間中や試用期間満了後に解雇する場合であっても、正規雇用後に解雇する場合と同じく「合理的な理由」が必要となります。
理由は、労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められているからです。
ここでいう「合理的な理由」とは、正規雇用後の場合であれば、勤務態度が極めて悪い場合、正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返す場合、本人の履歴に重大な虚偽の事実があったことが発覚した場合などが該当します。
一方、試用期間中や試用期間満了後に解雇する場合であれば、「留保されている雇用契約の解約権」を行使することにより、「能力不足」も「合理的な理由」と認められ、これによる解雇も可能になると考えられます。
2.で述べたように、解雇する場合は30日以上前の予告か平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払が必要です。
従ってもし、試用期間が3か月で解雇予告手当を支払いたくないのであれば、少なくとも試用期間満了の30日前、つまり試用期間が始まって2か月以内に正規雇用するか判断し、解雇予告する必要があることになります。
つまり、試用期間3か月といえども、実質2か月しか適性を見極める期間はないのです。
試用期間満了後の解雇はよくトラブルになります。
従って、試用期間があるからといって安易に採用するのは危険です。
採用時には、正規採用しても大丈夫な人材を見極めることが必要です。