皆さんの会社の就業規則には、労働者が企業秩序や服務規律に対する違反行為をした場合に対応するため、懲戒処分の制度を記載しておられると思います。
懲戒処分の種類は、公序良俗及び法令に反しない範囲で定めることが可能であり、主なものとしては、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇の6種類が挙げられます。
ところで、上記の懲戒処分のうち、出勤停止について、その期間は何日、何か月くらいに設定するのが好ましいのでしょうか。
今回は、出勤停止の「限度日数」について取り上げてみたいと思います。
出勤停止とは、労働者が会社に出勤することを禁止する処分のことをいいます。
これは、労働者に企業秩序違反などの落ち度があった場合に、制裁として出される処分になります。
一方、出勤停止処分と似たものとして、自宅待機というものがあります。
自宅待機とは、会社が労働者に対して業務命令として自宅に待機するよう命令するものです。
会社は、雇用契約に基づいて、労働者に対して業務命令を出す権利があり、自宅待機命令は、その権利に基づき発せられるものになります。
つまり、自宅待機命令は出勤停止とは違い、処分ではなく業務命令という位置づけになります。
なお、出勤停止期間については賃金の支払いは必要ありませんが、自宅待機の期間については会社の業務命令で強制的に仕事を休ませているため、休業補償的な意味も勘案し、原則として賃金の支払い義務があります。
出勤停止の制度を設ける場合は、その限度日数を合わせて定めなければなりません。
限度日数は法律では特に決められておらず、そのため会社ごとにまちまちであり、短い会社では5日、長い会社では6か月と定めることもあります。
出勤停止の限度日数をどのくらいに設定するかについては会社が自由に決められるのですが、限度日数が短い場合、適切に運用できないことがあります。
例えば、会社の就業規則で、懲戒の種類として、けん責、減給、出勤停止(限度日数7日)、降格、懲戒解雇の5種類が規定されているとします。
そして、労働者がやや重めのセクハラを行った場合、就業規則上選択できる懲戒処分は、出勤停止、降格、懲戒解雇の3種類となります。
しかし、仮にセクハラを行った当該労働者の職位が低く、落とせるランクが存在しない場合、「降格」を選択することはできません。
そうした場合選択肢に入ってくる処分は出勤停止(限度日数7日)又は懲戒解雇となりますが、懲戒処分の理由である「やや重めのセクハラ」に照らすと、7日の出勤停止処分では軽すぎ、逆に懲戒解雇では重すぎるというアンバランスな状況になってしまいます。
こうした状況を避けるために、出勤停止の限度日数は3か月や6か月といった長めの期間にしておいた方がいいと思います。
実際処分をする際には、状況に応じて、出勤停止期間は14日とか2か月など臨機応変に対応されるのがいいでしょう。
懲戒処分はできれば実施したくないものです。
しかし、何が起きるか分かりませんので、いざというときのために、制度としては導入しておくべきだと思います。