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京都の右下・知名度の空白地帯「陀羅谷」「笠取」「上醍醐」

今日も観光客でごった返す、世界的に有名な社寺や祇園、嵐山、東山などの有名エリア。
その傍らで、あまり知られておらず、人も寄り付かないようなひっそりとした場所を好んで取り上げる、いわば「へんこ」(※京都弁で偏屈、頑固の意味)のコーナー、それが当コラムです。

ここに至るまで、京北や花背・久多など人影の乏しいエリアに言及してきましたが、今回は右下の方に行ってみます。
特に、伏見区醍醐陀羅谷(だらたに)は秘境です。え?どこそこ??
そうだろう、そうだろう、知らないだろう。
多分京都市民でも、陀羅谷のことは100人に1人も知らないのではないだろうか?

■出発の地は石山

京都駅から陀羅谷に行くには、まずはJR琵琶湖線(東海道線)石山駅に向かいます。
えぇ?なぜ滋賀へ??ツッコミどころ満載ですね。
そこからバスで大石行きに乗り、「中千町」で降ります。
ちょっと前までは「千寿の郷」行きがあって、歩く距離は半分くらいで済んだのですが、全国的な路線バスの縮退傾向は留まることを知らず、致し方ありません。
というか、バスで行く人はいるのだろうか?
ひょろひょろの県道782号線に沿って3km、45分ほどの道のりです。

途中で道が狭くなり、千丈川に沿った狭い谷を行くと唐突に「京都市」の看板が出てきます。ただ今をもちまして足元の県道は府道にクラスチェンジ。
ただ、なぜか振り返っても大津市や滋賀県の看板は見当たりません。
ほどなくして谷が開け、視界には美しい石積みで作られた棚田が広がってきます。
そこが、陀羅谷です。

手前の三ノ切から集会所のある地区の中心・二ノ切を経て最奥の一ノ切まで、家々が点在し、その風情はいかにも京都の山里といった様子。
ところどころに蔵を従えた立派な農家のお屋敷も見えます。世帯数は、6軒。
地区の裏山にはこじんまりとしたお稲荷さんがありますが、構成要素はそれだけ。

取り立てて観光名所はありませんが、この素朴な景観こそ、半世紀前までは岩倉や嵯峨野辺りでも当たり前に見られた、京都近郊の里山の風情を手つかずのまま残していると言えます。

なお、当地の市外局番は077(大津)、郵便番号は601(京都)、学区は大津市立大石小学校。
地名は、かつて醍醐三宝院の修験場があり、陀羅尼経を埋めた伝説に由来すると言われています。

■笠取(かさとり)へ

二ノ切の分岐から府道を2kmほど進むと峠に至り、今度は宇治市域へ入りて東笠取に入ります。
かつては醍醐寺の荘園であったと伝わるこのあたりには、陀羅谷と同じように棚田や民家が点在する美しい景観が広がります。
ただ、岩間寺があるくらいでいかんせん知名度は低く、人影は薄いです。
バスなどの公共交通機関も皆無。
最寄りのバス停は依然として先ほど降りた「中千町」のまま。うそだぁ~。

さらに府道を西へ3km、もうひと山越えると谷が変わって西笠取です。
ここには市営の野外活動センター「アクトパル宇治」があり、府南部一円の小学校や保育園のキャンプ場として知られ、訪れた方もいらっしゃるかもしれません。
ここまでくると京滋バイパス笠取ICも近く、交通至便に見えますがマイカー限定。
依然としてバス・鉄道の類はありません。

■再び京都市へ

西笠取から府道の進路は北へ変わり、熊が出そうな森の中を3km登ると横嶺峠に到達します。
峠からさらに北に2.5kmほど進むと、昔の京都国際カントリー倶楽部を潰した跡地に京都府最大のメガソーラー発電所があります。……って、いやいや、バブル期の日本人はこんなところまでゴルフしに来てたのか?ゴルファーの情熱と運転技術を讃えたくなるような立地です。
さらにその北側には、京都市民のごみの最終処分場(=どうしようもない粗大ごみと焼却灰の埋め立て地)である「エコランド音羽の杜」が広がっています。

あぁ、これは外縁、辺境、地図の端、という感じがします。いいですね。
内外からの興味を集めるエキゾチックな街・京都ですが、人が暮らせば電気も要るしごみも出る。
今あなたの手元を照らすその電気は、あのへんの山に降り注いだ太陽パワーの一部かもしれない。
そして、あなたが京都観光の折に渡月橋脇のゴミ箱に捨てた焼き鳥串も、祇園で接待を受けたときのお手拭きも、ホテルでかんだ鼻紙も、いずれ焼かれて音羽山に埋められます。東山のもっと東の山の奥の奥の、見えないあたりです。

なお、横嶺峠を含んだ一帯は醍醐寺の寺領で、峠からさらに10分ほど南下した山中が上醍醐。五大堂や秀頼が建てた開山堂が点在します。

そして驚くべきことに、峠から先の府道はなんと自動車・バイク通行止め。
府道でありながら落ち葉が積もった九十九折の登山道。
これぞ、道路の格と実態があってない時に言われる「国道ならぬ酷道」、「県道ならぬ険道」の府道バージョン、「腐道」であったかと、ニヤニヤしながら下醍醐へ還俗、もとい下山します。

というわけで、最終的には醍醐寺の脇にポーンと放り出されるわけなんですが、いかがでしたでしょうか(何が)?
大津から入って、知名度の空白地帯、文字通り京都の輪郭線を歩く旅。
スーパーマイナーロード・滋賀県道兼京都府道782号線の道ゆき。
あなたの知らない、知る由も、そして別に知りたくもない京都が、そこにある。
穴場というより穴の中。

でも、街って、人の暮らしって、どこまでも地続きで、どこまでもつながっているんだよなぁと、そんな気にさせてくれる旅でした。