自分らしく働く、ということ

先日、いわゆる就活サークル主催の、『社会人の先輩に、仕事や就活の話を聞こう!』というイベントがありました。

※就活サークルとは…(勝手な解釈)
当事者となるまでイメージし辛い就職活動について、先輩から後輩へそのノウハウを伝達するだけでなく、集まりを作ることで経験や知識・知恵を共有したり、イベント企画や運営経験を通じてチームワークなどの経験を培ったり、それをそのままエントリーシートのネタにしたり、使い方はその人次第、という面白い集団。

自転車は、趣味で繋がりのあるある大学生の友人に、社会人として参加してほしいと言われたので、頭数そろえるだけ、という条件の下、紛れ込ませていただきました。

実際、複数の学生さんとお話しする機会がありましたが、私自身、小さな企業に属する者ですので、学生さんからしたら名刺を見ても「何処の誰?」という反応で、それでも最初は興味をもっている「ふうに」接してくださるので彼らは偉いな、と思うのですが。いや、もう、わかります。あまり私に興味のないことは。

やはり一般論で、「大きな会社」に属することが、昨今の就活における第一目標です。それは、否定できないし、別にそれでいいと思います。

しかし、ここからが難しいなと思うのですが、今教育機関や就活ビジネスで喧伝されるキャリア選択のゴールは、そこで「自分らしい仕事」にかかわること。新卒・中途にかかわらず、それが最重要課題として設定されている点です。

これは言わば、非常に困難で、壮大なゴールです。
なぜって、それを達成できている大人は、この世にそんなに多くないと思うから。世の中は、決してそういう風にはできていないから。

だって、みんなが好きなことを始めたら、いったい一つの町にケーキ屋さんは何件要るのよ?プロサッカー選手は、歌手は、何百万人必要なのよ?
いや、それ、絶対に要りませんから。

この当たり前の事実は誰の目にも明らかなのに、しかし、それがうまく受け入れられないがために苦しんでいる学生、いや社会人も、多く見てきました。自分自身、そういうことで悩んだ時期もありました。

そのことが決してくだらないとは思いません。いや、くだらないと思う大人もまた、多いのですが。そんなこと、考えるだけ無駄だ、今目の前にある仕事を、しゃにむに頑張ることが未来を切り開く唯一の道だ。それはもう本当にそうだと思います。

でも、そう思える人は、偶然に、そう思える機会や成功体験がもたらされたに過ぎないのではないでしょうか。

今の若い人たちって(自分もそうでした)、早ければ中学生のころからキャリア教育が始まります。そして、ひたすら、やりたいことを探せ、自分らしい生き方をしろ、それが幸せなんだ、それが成功なんだと、教え込まれます。

そのくせ、大学とか専門学校とか、(選ばなければ)簡単に入れますから、自分で選択の軸を作って、何か目標に邁進する、なんてことはよっぽどの変人じゃなきゃできない。ましてや、ただでさえ選択肢の多い世の中。進路にしても、生き方にしても、選択肢を「与えられ」「その中から選ぶ」行動が染みついている人間に、たまたま目の前にあった扉を開けて、四の五の言わずに走れ!進め!という考え方は、スッと入っていかないんですよね。アホなんじゃなくて、その考え方が理解できない。

それでなくてもバブルが終わって、低成長どころか、人口減少社会。私たちは下降線の世の中を生きながら、かつてのように等しく金銭的・経済的な繁栄にあずかれないことを分かったまま、我が親への厳しい風当りを見て育つのです。

だからこそ、経済的な成功だけを軸に職業を選択しないという道(そこそこ給料もらってりゃ、特別贅沢できなくてもいいとか)は、魅力的な生き方だと思えるし、厳しい現実があることをなんとなく感じているがゆえに(当事者意識や、リアルな危機感を持てるかはともかく)安定を求めるのです。

だからこそ、自分たちの生活様式の中で得られるごく限られた情報…いわゆる「聞いたことある会社」「つぶれない公務員」に人気が集まり、そこで働く自分をイメージし、それが自分のやりたいことだと、思い込むのです。

それに呼応するように、大手企業は潤沢な予算を投じ、エージェントのマーケティングパワーをフル活用した、ピッカピカの採用ページを立ち上げ、人事部のエース級人材を採用担当につけます。彼らには枠を埋めるというノルマがありますから、少しでも優秀な人材を獲得できるよう、心血を注ぎます。

うぶな学生さんなら、クラっと来るでしょうね。

あなた方の心に刺さるように、それらのツールは計算され、磨き上げられているのですから。きっと、あなたの才能を存分に発揮できるフロンティアがそこに転がっているような「錯覚」を、うまいこと表現していることでしょう。

しかし、それと実際の仕事は、全く別のものです。

確かに、大手と中小で、差はあります。

名刺を渡したとき、肩書や社名の放つ妙な威圧感ったら、社会人にならないとわからないでしょうね。

建物や立地環境、福利厚生や給与額、先にそこにいるメンバーが優秀かどうか。「比較的有利」なのは大企業でしょうね。

でも、繰り返しますが、それと実際の仕事は、全く別のものです。

実際の仕事は、多くが辛く、苦しいものです。

たゆまぬ努力が必要で、報われるとも限らなくて、理不尽で、難しくって、大変なものです。無駄も後戻りも多いです。絶対困惑します。学生の時には、そんな体験、めったにありませんから。

これは多くの人が実感として持っていると思いますが、大手だから楽とか、中小だからしんどい、ではありません。

あなたがよっぽど特定の分野で優れていなければ、

仕事なんて、誰にでもできる事ばかりです。
仕事なんて、あなた以外の誰かが、やれるものがほとんどです。
仕事であなたのオリジナリティを出してほしいなんて、誰も思っていません。
仕事は、自己表現活動でなければ、あなたの自分らしさを実現するためのものでもありません。

ただ、中小企業では、少ないメンバーしかいませんから、一人が沢山の仕事をこなさなければなりません。

よく、組織の歯車は嫌、とかいう意見を聞きますが、勤め人は等しく全員歯車です。が、こと中小に限れば、大事な歯車になりやすい(されやすい)という特徴はありそうです。

今の自分より少し大きな服を着せられ、必死で大きくなろうともがき、のた打ち回る。そんな体験が得られ「やすい」というのも特徴です。

そういう機会を思いっきり享受したい、今の自分のアタマで勝負がしたい、という方には、選択肢として有力だと思いますが。

不景気です。下降線です。でも、張り切って働いている人はいる。

会社の大小にかかわらず、やりたいことをやってる人間は、いる。

たった20年そこそこしか生きてない、薄っぺらでまだまだ拡大の余地がある自分の、あるんだかないんだか分からない「らしさ」に囚われて、身動きが取れないなんて、馬鹿げています。

自分らしさで仕事ができるようになるのは、ずいぶん先の話だから。そんなこと今から悩んでも、大した意味ないから。その悩みが切実であることがわかるが故に、そんな言葉をかけたくなります。

結局、「自分らしい仕事」なんて、どこにも転がってなどいません。

そもそも会社は、企業理念の実現のために結集したチームです。

それに賛同する人間が、そこに思いを重ねて行くべきものです。「会社のやりたいこと=自分のやりたいこと」という状態へ己を変えていというのが、正しい順番です。

だから、誰しも、最初は「やらなければならない仕事」を与えられ、訓練に訓練を重ねて、任され、失敗しながら、少しずつ「やれる仕事」を増やしていきます。

その結果、その会社・業界のルールに則った「やりたい仕事」が視野に入ってきて、ときにはそれを打ち破るイノベーションとしての「挑む仕事」が生まれるかもしれません。

でも、「やらねば」→「やれる」→「やりたい」この順番は鉄板。

会社が小さかろうが大きかろうが。

仕事なんて、やってみなけりゃわからない。残酷だけど、それが真実。たまたま出会った仕事を、たまたま好きになれるかどうか。そんなのたまんないと思うかもしれないけど、普通に生きてて、自分で「選択」「コントロール」できることなんて、ほとんどないのだよ。

あきらめろって言ってんじゃない。でも、思う通りにはいかないことは、当たり前。痛いのは当然。だから、そんなことでいちいち悩まなくていい。悩んでもいいけど、仕方がないこと。みんなそれぞれ大変なんだから。

そんなことを教えてくれる人は、本当に少ないけれど。

かくして、「ネット通販」という名札を下げた中小企業のいち担当者の話を、自ら聞きに来る学生は、ごくわずかでした。

大きな会社に入ることが、日本社会で生きていくうえで、有利。

新卒という切符がなければ、大きな会社には入れない。

そのヒエラルキーの中では、私なんぞより、もっと大きな会社に籍を置く者が、自分たちが臨む「就活」という戦いにおける「勝者」であり、「勝者」からその極意を伝授してもらうことに興味が向くのは当然です。

それは、決して学生のせいではなく、忙しさにかまけてその職業の魅力を、彼らに解る形で語ってこなかった、私たちの業界の社員、中小企業の社員の側にも問題はあるでしょう。

そんな現状を簡単に変えることなんてできませんが、せめてここに、先輩社会人としてささやかな「小石」を投げ込んでおこうと思います。

そして、このエントリが負け犬の遠吠えだと笑われないよう、自分なりの職業人生を、切り開いて見せます。こんな自分のもとに話を聞きに来てくれた、学生さんのためにも。

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