月と暦と京の街

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送り火が終われば秋の足音が聴こえる…とは到底言えない、しつこい暑さを引きずるこのところの京都ですが、紅葉の前の秋のイベントと言えば「月見」です。

月と言えば、京都はところどころに旧暦(太陰暦)が見え隠れします。

大盛り上がりの節分、2月に七草粥をふるまうお寺、家によっては4月に飾るお雛様、8月に実施される七夕イベント「京の七夕」などなど…

少々脱線しますが、暦(こよみ)と言われるものの多くは旧暦が基準です。桃の咲かない桃の節句(3月3日…旧暦では4月)、別にありがたくもなんともない五月晴れ(旧暦では6月の梅雨晴れ)、梅雨の只中なのに水無月(6月…旧暦では7月)、織姫と彦星が全然出逢えない7月7日(旧暦では8月)、肌感覚に合わない立夏立冬(6月、11月…これも旧暦で考えると7月・12月)という具合に、およそ日本の季節は旧暦基準なのです。何も考えずに?新暦に日付だけ揃えに行ったから、訳の分からないことになっています。

しかし、今もほとんどの日本人の中で「旧暦」が息づいているイベントが一つあります。十五夜、中秋の名月です。

旧暦の「秋」は7、8、9月を指します。中秋とは、文字通り秋の真ん中という意味で8月です。ところが、8月15日に月見をしている人、見かけませんよね?何故かここぞとばかりに旧暦を律儀に守り続ける、現代のお月見。

旧暦の基準である「お月様」に対する敬意の表れか、はたまた盆の只中、
お月見してる暇なんてないやい、というご都合主義なのか。

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■京都で月を眺める

お月見の催しはたくさんあります。代表的なスポットはなんといっても
【大覚寺】
大沢池に船を浮かべ、水面に映る月を眺めながら文人たちと遊んだのは嵯峨天皇。今も当時の風情そのままに船を出します。
早く行けば船の席が取れるかも?万一乗れなくても、近くでは夜店も並び、ちょっとしたお祭り気分です。

個人的には、近くの広沢池に至る畑の中の道を散歩してみるのが良いと思います。この辺りは風致地区と言い、建築や電飾が制限されています。道ゆく自分の月影の濃さに、しばし忘れかけていた月の明るさを思い出せることでしょう。蛇足ながら、普段通らない夜道は二人以上で歩きましょう。

【渡月橋】もいいですね。
この時期は亀山天皇によるネーミング通り、大堰川に架かる橋の上を月が渡っていく風景を眺められます。ただ、あまりにも多すぎる人出に少々難あり。
落ち着いて観月したいのであれば、深夜に訪れることをお勧めします。船を出していたお公家さんたちも、「月が渡るまで」夜通し見ていたわけですからね。

【下鴨神社】では風流に。
雅楽の奉納があります。舞や琴、オーケストラの演奏も。
こういった観月の催しは、【八坂神社】や【平野神社】などでも開催されます。

【上賀茂神社】が外せない。
なぜならズバリ、月見団子がもらえるから。無料ですが先着300名様まで(昨年)。近くの賀茂川の川べりは夕方から川風がそよぎ、本当に気持ちが良いです。暑い京都の夏をなんとかやり過ごしたという、妙な達成感と歓びがこみ上げてきます(笑)

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■自宅から眺める

個人的には、これが一番の贅沢ではないかと思っています。
東京や大阪はビルが高く月も星も隠れがちですが、京都には高層建築が少なく(そうも言っていられなくなってきていますが…)まだまだ空が開けています。

軒先から覗く月は驚くほど明るく、家々の影を映して輝きます。ネオンや電飾看板の少ない京都は、人口100万都市の市街地でも存在感のある月が眺められる稀有な街です。

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■月の不思議、暦の不思議。

明治6年に廃止されてしまった太陰暦。しかし、いまもイスラム圏では陰暦が息づいています。ラマダン(断食月)の時期が毎年ずれていくのは太陽暦と周期が合わないためです。

日本に太陰暦を伝えたお隣中国でも、「正月」と言えば二月頃の「旧正月」です。もちろん中秋節も大切なお祭りで、お世話になった方へ丸いお菓子・月餅を贈ります。全体に、アジア諸国では概して月に対し親しみを覚え、生活に根差したものとする傾向があり、絵に描くときも、黄色のやさしい光で表します。これが西欧に行くと冷たい青。月は忌むべきもので、魔女や狼といった、不吉さの象徴として扱われます。

いずれにせよ、洋の東西を問わず赤ん坊がお腹に留まる「臨月」280日、これは名前の通り月基準です。満月の時にお産が多いとか、事件が多いとか、それは誤りだとか、人と月の関係は古来よりいろいろと論じられてきました。
月は今も、陰ながら私たちの生活に影響を及ぼしているのではないでしょうか。

そもそも今日この日を表す「月」「日」の関係も面白いですね。一日ごとに回っていく太陽、ひと月(28日)ごとに満ち欠けする月。

闇夜に浮かぶまあるい月を眺めながら、普段何気なく使っている暦や身体に思いを馳せてみるのも面白いですね。恍惚とした光を静かに眺めていると、やがて宇宙や生命の神秘を感じずにはいられません。

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