豆腐と京都

マザーウォーターという映画、ご存知でしょうか?

京都を舞台に、特に事件が起きるでもない日常が、これでもかこれでもかと
延々続いていく、映画?としては好き嫌いが分かれそうな作品です。
(私は駄目でした…)

そこに出てくる豆腐屋が、また妙な雰囲気を醸し出しておりまして、お客さん
が「豆腐くれ」というと、若いねーちゃんが水槽から取り出して器に入れて
くれます。
(それを店頭でいきなり食べだす光景はさすがに見たことはありません)
(あと、若いねーちゃんが店番してるのも…)

ただ、店先で豆腐を水槽から取り出す光景は、今も京都の町で見ることができ
ます。

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京都の豆腐は、鎌倉時代の禅文化の隆盛以来、精進料理に多く取り入れられて
きたことから、製法も料理もずいぶん早くから発展したそうです。

京都の豆腐がおいしいとされる理由の一つは「水」です。

酒造りでも有名な京都は、地下水が豊富なことでも知られ、有名なところでも
上賀茂神社や銀閣寺、清水寺と、清水が湧き出すスポットが数多くあります。

豆腐の90パーセントは水でできているそうですから、豆腐作りにおいて水が
いかに大切かは言わずもがな、というわけです。

残念ながら、市内の一般家庭に引かれている水道水の多くは琵琶湖疎水から
採ったもので、京の町を流れる伏水・井戸水ではありませんが、京都の豆腐屋
さんは、汲み上げた地下水にこだわっているお店が多いそうですよ。
店先で聞いてみてください。

それではここで、「今の京都」ではどれだけ豆腐作りが盛んなのか、統計を
紐解いてみることにしましょう。

(京都府)豆腐製造事業者数…309件、第11位
(京都府)人口一人当たりの製造事業者数…8503人に1件、第23位
(京都市)都市別1世帯当たり年間購入数量…65.62丁、第47位?

※基礎データ出典
全豆連 http://www.zentoren.jp/economy/enterpreneur.html
農水省 http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/d_data/

…おやおや?経済的な側面から見れば、今の京都人がとびぬけて豆腐好き、
というわけでもないみたいですね。

寺社の多い京都。精進料理の盛んな土地柄を思えば、もう少し消費量も多いの
かと思いましたが、しかし、年間購入「金額」では全国8位なんですよね。
美味しい豆腐を少しずつ食べる、ということなのでしょうか?

たしかに、「水槽から取り出される」豆腐は、一丁200円くらいしますもんね。

※ちなみに、消費量でいうと盛岡と沖縄が二強です。
 世帯当たり100丁の大台を超え、それはグラムで言うと30㎏。すごい!

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京都と豆腐、そして冬と言えば、やはり「湯豆腐」。

もともとは南禅寺界隈で精進料理を提供していた「奥丹」さんが、お品書きに
加えたところ大人気となり、たちまち門前に同様の店が並んだそうで、それ
から300余年。いまでは天龍寺、竜安寺など、市内のそこここで湯豆腐にあり
つけるようになりました。

なんでしょうね、修学旅行のときなんかは、たかだかお湯に入れた豆腐にウン
千円なんて、観光客を馬鹿にしてんのか?なんて思っていたりもしましたが。

しんしんと冷える京都、冬のひと気の少ないお寺を拝んだら、よく手入れのされ
たお庭を眺めつつ、あつあつのお豆腐をはふはふ…ふむ、それもなかなか贅沢
だなと、思えるような年齢になってまいりました。

そうそう。『南総里見八犬伝』を書いた戯作者の曲亭馬琴は、南禅寺の湯豆腐を
「南禅寺豆腐は江戸の淡雪におとれり」とけなしたそうで。

また、祇園で食した豆腐田楽と江戸・甲子屋の田楽についても、江戸に軍配を
上げています。まぁ、この人は江戸びいきで有名でもありますがその馬琴で
さえ、京都の料理屋の造りや店内の雰囲気には感心したようで、「そのきれいな
こと江戸のおよぶところにあらず」とほめたそうです。

修学旅行生だった自分に、料理とは、食べる「もの」だけを指すのではないの
だよと言っても、分からないでしょうねぇ。

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