梅小路(うめこうじ)公園をご存知ですか。
京都駅から西に15分ほど歩くと、町並みが途切れ、突如広大な芝生が自慢の公園が広がります。
公園は京都水族館と京都鉄道博物館を中核施設として、いつも多くのファミリーでにぎわっています。
この梅小路公園が、今年開設30周年を迎えました。
あれ?思ったより、歴史が浅い?
京都駅の西側、東海道本線と山陰本線が分岐する辺りは、旧国鉄の「梅小路貨物駅」として長年全国から集まる貨物の中継基地となっていました。
公園のすぐ北側には公設市場も開設されて専用の引き込み線があり、周囲には国鉄職員の官舎が建ち並び、多くの人で賑わいました。
ところが、高度経済成長を経て貨物輸送は鉄道からトラックへと移り、京都における物流の中心地だった梅小路ヤードは、巨大な遊休施設と化してしまいました。「うめきた」として新たに生まれ変わった、大阪の梅田北ヤードと同じ構図ですね。
これを京都市が購入し、緑が少ない市街地に緑地を増やし、災害時に市民の避難場所としても機能するように、平安建都1200年記念事業の一つとして整備し、1995年4月29日にオープンしたのが梅小路公園の起源です。
当初は大きな緑地と庭園(朱雀の庭)、森、管理施設(緑の館)が整備され、隣接して古い機関車庫を活かした「梅小路蒸気機関車館」があるだけでした。
それでも、建て込んだ京都の街中にあって広々とした芝生広場は貴重で、子どもたちから学生、社会人まで、思い思いにボールを蹴ったり、走り回ったり、ピクニックしたりして過ごしてきました。
人気バンド・くるりの岸田さんが主催する音楽イベント「京都音楽博覧会(おんぱく)」など、大規模な野外イベントも度々開かれてきました。
「梅小路通」というと、京都に住んでいてもあまりピンときませんが、塩小路通と八条通の間に挟まれる形で存在している東西方向の通りの名です。
名は平安京の昔には梅の並木があったことに由来しているとのこと。
いまも堀川通より西側、JRの線路の北側に沿う道をそう呼んでいるようですが、特に愛称板などはありません。
ま、平安京当時の位置関係で言えばJR線そのものです。
皆さんがいつも新快速で京阪間を高速移動してるあの鉄路が、平安時代の梅小路だと思っていただいて差し支えありません。
ちなみに、公園の芝生広場や線路のある辺りは「西八条第(にしはちじょうてい)」と呼ばれる、平家一門の邸宅群のあった場所とされています。
あの平清盛の家も、この辺にあったということですね。
800年くらい前の話ですけど。
2008年、京都市は梅小路公園を再整備することを決め、民間に開発プランを募りました。
ここでオリックスグループが水族館の建設を提案し、決定すると非難ごうごう、やれ京都らしくないとか、海のない京都盆地に水族館は不自然とか、人工海水での運用はサステナブルでないなど否定的な意見が噴出しました。
ところが、2012年にいざ開館すると、入館者数は順調に推移し、もう13年目。
すっかり観光スポットとして定着したと思います。
京都は、名だたる寺社仏閣、多彩な飲食店やカフェと、大人が過ごしたり、遊んだりする場所には事欠かないのですが、乳幼児連れの肩身が非常に狭いのです。
そこに風穴を開けてくれた存在として、私個人的にはとても気に入っていますし、助けられました。
夏の猛暑の中、2回の入場料で作れる年間パスを持って、何度娘息子を連れて涼みに行ったでしょうか。
旭山動物園のパクリと言われようが、アザラシが円筒型の水槽に浮かんでくれば嬉しいし、触れそうなくらい近い距離にペンギンがいれば興奮する、それが子ども心ってもんですよ。
続いて、2016年には京都鉄道博物館がオープンしました。
ここも、子連れにとってはパラダイス。
実物の新幹線や昔の電車、模型や資料の展示が充実しています。
また、前身の梅小路蒸気機関車館は、国鉄時代の1914年に建てられた扇形車庫(重文)を利用して、蒸気機関車を動態保存しようとして1972年に開設された施設です。
そのまま京都鉄道博物館に受け継がれ、日本中から集められた機関車が、現在も煙を吐き出しながら公園の南端を走る姿を見ることも、乗ることもできます。
梅小路エリアは、この2つの施設の存在で、お寺さんに興味ない修学旅行生の逃げ場にもなっているし(笑)、変に京都らしい平安京記念館とか作られても救われなかったなと思っています。
もうええねんて、寺は。外部資本によって作られた京都らしさは。
私達、京都に住む普通の生活者が欲しかったのは、普通の都市住民としての憩いの場やねんて。ありがとう、京都市。
そういうわけで、梅小路公園、今や京都に住むファミリー層の聖地かつ避難地と化していますが、さらに「朱雀ゆめ広場」という屋外遊具エリアに、JRの新駅「梅小路京都西駅(この駅名だけはなんとかならんのか)」、梅小路ポテルなどの綺麗で新しいホテルも加わり、ようやく開発ラッシュは一段落しました。
さすがに最近は人増えすぎやろと思う気持ちもありますが、ともあれ(子連れの)京都市民の貴重なオアシス・梅小路公園。
お年を召された方には縁が無い、品が無い、京都らしくないと言われがちですが、地元民向けのスポットとして、これからも愛されていくことでしょう。