事業承継税制の特例の創設

例年になく寒さが厳しい冬でしたが、春を迎えると暖かい日が続き、桜の開花も早かったようです。

昨年の10月号で事業承継税制の贈与税にふれてみましたが、平成30年税制改正により、「事業承継税制の特例」が創設されましたので、新たな税制の説明とともに、中小企業の事業承継の現状にもふれてみたいと思います。

1.中小企業の事業承継の現状

中小企業庁がアンケートを基に、事業承継に関する現状と課題についてまとめていますので少し紹介したいと思います。

  • 中小企業の経営者の高齢化が年々進み、年齢ピークは66歳、近い将来70歳に達する経営者が30万人に達すると予測。
  • 経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まり、経営者交代による若年経営者の方が利益率や売上高を向上させている。
  • 60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定している。

廃業の理由は、「自分の代でやめようと思っていた38.2%」、「事業に将来性がない27.9%」、「子供に継ぐ意思がない12.8%」が主なものです。

後継者問題の相談相手は、1位「特に相談相手はいない36.5%」2位「顧問税理士28.1%」3位「社内役員26.7%」4位「親族23.9%」の順です。

後継者がいない場合の解決策の一つとして、M&Aニーズは増加傾向にあるが、年商3億円以下の案件を扱う民間のM&A仲介業者が少なく、「後継者斡旋等」の支援の方が有効ではないか。

上記のような現状の中、廃業を予定している企業であっても3割の経営者が、同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性についても4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答している点は注目すべきことです。

各地域において、業績の良い会社や特赦な技術、ノウハウを持った会社が廃業してしまうことは、地域での雇用を失いますし、地域の活力も失う可能性もあります。

2.事業承継税制の特例

中小企業庁も後継者不足による優良企業の廃業は、国とっても大きな損失と考え、税制面も含めた多方面の事業承継の支援を行っており、今回、さらに納税猶予要件が緩和された形で新制度が創設されました。

中小企業の代表者の持っている自社株式は、優良な企業ほど評価額が高く、高いゆえに相続財産としての価値が上がり、高額な相続税がかかってしまいます。

しかし、相続した後継者はその自社株式を売却してお金に変えることは出来ず、相続税の負担のみを背負うことになります。

この事業承継税制を活用することで、最終的には自社株式に対する相続税が免除になります。

  • 適用年度と提出要件
    平成30年1月1日~平成39年12月31日までの贈与・相続・遺贈に適用平成30年4月1日~平成35年3月31日までに、都道府県へ特例承継計画の提出が必要。
  • 対象範囲と猶予税額
    【現行】発行済み株式総数の2/3までが対象 猶予割合は80%
    【特例】議決権株式の全てが対象 猶予割合を100%に拡大
  • 複数人からの承継が可能
    現行では一人の先代社長から一人の後継者への贈与のみが対象でしたが、特例では贈与者を先代経営者に限定せず、例えば先代経営者の配偶者からの贈与も対象とし、又、複数の後継者が受贈者となるケースも対象としており、対象者の範囲が広がっています。
  • 雇用確保要件の緩和
    現行において経営承継期間(5年間)の平均が、贈与時の雇用者数の8割を下回らないこと、となっていた要件が事実上なくなりました。

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