WEBデザイナー(WEB担当者)の仕事観

初出2015年1月21日
増補2019年1月10日

弊社のWEB部門は、求人の際に「WEBデザイナー」として掲載しています。
(後日注:執筆時では「WEBデザイナー」でしたが、現在は「ECサイト運営/WEB担当」です。ただ、職域としての画面デザイン/制作は現在も主要業務です。)

ただ、この「WEBデザイナー」という言葉は非常に曲者です。
専門学校や職業訓練校、通信教育が氾濫し、WEBデザイナーという言葉自体の定義が曖昧で、掴みどころがないためです。
改めて、「目指してほしいWEBデザイナー像」というか、ミモザに属するとこういうことを気にしながらデザインをしますよ/してほしいと考えてますよ、ということを書いておこうと思います。

受託のWEBデザイナーとECのWEBデザイナーの仕事は結構違う

WEBデザイナーの属する会社組織には、大きく2つあります。

■一つは受託制作を行う制作会社のデザイナー。
 ほとんどがこちらです。
 WEBが欲しい会社・行政・個人から仕事を請け負い、制作を代行する仕事。
 比較的大きな会社は少ないです。フリーランスの方も大勢います。
■もう一つは、事業会社のインハウスデザイナー。
 自社運営しているサービスを届けるためのサイトを、自社で制作運営する仕事。
 具体的には、Yahoo、amazonなどのインターネットサービス大手から、
 私たちのようなECサイトを運営する中小零細企業まで、様々です。

それぞれのゴールはどこか?

受託制作会社のデザイナー

→納品です。
ホームページを納品するためには?
 顧客のGO
顧客のGOを得るには?
 キーマンの了承
 キーマンとは、決定・決裁権者/社長・経営者、業務責任者等で、必ずしも担当者ではない
 キーマンの「思いやこだわり」への理解と信頼関係

事業会社のデザイナー

→売上です。
売上を上げるためには?
 サイト利用者をふさわしい商品やサービスへ導く
   └(ナビ・バナー等導線の設計、検索設定)
 利用者へ商品やサービスの機能を伝える
 利用者へ商品やサービスの魅力を伝える
 利用者となりうる顧客候補を集める

納まれば終わる仕事と、事業を続ける仕事

受託制作は、ページ作りにエネルギーを集中投下します。
事業会社は、運営・更新に莫大なエネルギーを注ぎます。
一般的なWEB制作の教育カリキュラムは、制作に比重が置かれています(当たり前ですが)。
必然的に、受託側はページ作りの専門スキルが要求され、事業会社側には、事業(扱っている商品・サービスや相手にしている顧客)に対する理解が大前提となります。事業会社では、マーケティングや運営・企画に特化し、ページ制作を全て外部の制作会社へ委託することも多いのです。

究極のゴールは一緒

自社/顧客の事業が発展することです。
事業の発展→手腕を認められる→仕事/裁量が与えられる→難しい仕事に挑戦できる/経験・技術が伸びる→収益に貢献すれば給料/報酬が上がる→関係が続く…

どこに属していても、WEBデザイナーの持つべき視点は常に3つ。

1…デザイナーとしての自分の目
2…サイトを実際に利用する人(利用者)の目
3…サイトを使い、実際に事業を行う経営者/事業責任者(顧客)の目

それぞれは対等…というか、バランスが大事です。究極的には2が最優先なのは言うまでもないんです。
が、2を深く理解しているのは、1よりも3であることが多いものです。

顧客側キーマンの「思いやこだわり」は、十人十色

一般的には、やはり売上です(受託制作/事業会社問わず)。
なぜなら、あなたに仕事を発注する(あるいは雇用する)ためには、費用(賃金)が掛かります。
そのための原資となるお金を稼がないと、仕事として成立しませんので、趣味ではなくビジネスとしてサイトを制作する以上は、どうしても売上、収益が欲しい。

身も蓋もないい方をすれば、仕事としてデザインをする時以上、「お金」=「ゴール」です。

「見てもらえる」=「ゴール」ではありません。
「かっこいい、きれい」=「ゴール」でもありません。

はたまた、ブランディングとか、エンゲージメントとか、UIとか専門用語、業界用語に「逃げないで」ほしいです。
そのWEBサイトがいかに顧客の収益に貢献するか、費用をカットするか、投資したカネ/時間がどのくらいで回収できるか、回収できないコンテンツは省略できないか。

そこまで考えて欲しいです。
これが彼ら(キーマン)の言語です。彼らは「ユーザーエクスペリエンス」とか「PV」「UU」とかに興味はないです。

彼らの腹に落ちる論理展開でデザインや施策のことを伝え、納得を得ながら任せられるのがプロです。
分業が進み、WEBディレクターがこの仕事を担うことも多いです。
但し、この辺の事情が分からないと(分かる努力をしないと)、デザイナーはディレクターの指示を正確に理解できないので、無限の修正地獄がはじまるのです。
しかも、中長期的には人件費は安い方が良いので、雨後の竹の子の如く過剰供給されるデザイナーの卵に揉まれながら、一山いくらの世界へ突入していく運命です…。

デザイナーは「伝える」プロたるべし

デザイナーは、ビジュアルデザインで伝えることだけが仕事ではありません。
「デザイン」という言葉は、設計という意味です。
利用者と顧客をWEBという媒体でいかに結び付けていくのか、そのプロセス全体を「設計」するのがWEBデザイナーです。
コーディングの巧拙、最新技術の利用の前に、考えるべきことは山ほどあります。
伝わるとは?情報を整理、再構築し(あるいは味付けを施し)見ている人に「行動を起こさせる」です。
まずは顧客にその狙いを伝えられなければ、その先にいる利用者に伝えることは難しいでしょう。

繰り返しになりますが、「それはディレクターの職域である」という指摘はあってしかるべきとは思いますが、しかしながら、ディレクターの意図を汲めるデザイナーでなければ、やはり仕事としては成り立ちません。

ミモザでもどこでも、事業を理解し、経営に貢献できるデザイナーを目指してほしい

=顧客や経営者の要求・悩みを理解し、寄りそう解を導き出せるデザイナー
=販売している商品の立ち位置・機能を理解し、事業のターゲットに結び付けることのできるデザイナー
(あるいは、それをチームとして提供できているか否かを自らに問うことができるメンバーであってほしい)

そのためには、事業を理解することが最優先です

事業、すなわち、商品と顧客を理解することが何よりも重要です。
自分にとって興味のない商品のカタログを片っ端から読み漁り、分からない単語は調べたり先輩に訪ねたり、カスタマー部門へ行き顧客からの問い合わせメールを集め、出なくていいと言われる電話にあえて出てみるくらいの気概と、それを続ける根気が要ります。
ミモザでも、WEBページを作るよりも、商品を知ってもらうことが優先です。ある意味、商品が分からなければ、コンテンツなぞ作りようがないからです。
15,000点もありますから、何年もかかると思います。

結果の出る「良いデザイン」をするにあたり、最も大切な事

独りよがりにならないこと

自分以外の人の話をよく聞く
自分以外の人の感性を大切にする
自分以外の人に興味が持てる、尊重できる

キーマンと話せる環境で仕事ができること

商業デザインの究極的な目的は、想いやこだわりを具現化し、情報の受け手の「行動を引き出す」ことです。
仕事相手である経営者の思いやこだわりを、なるべく上流でキャッチできる環境で議論できるか否かは、自分の視点を引き上げるために必須条件です(ミモザにはあります)。

【追記】2019年現在の様子

WEB業界/WEB人材は引き続き専門分化、守備範囲の細分化が進んでいます

WEB制作の技術革新は相変わらず早く、制作環境や設計プロセスもどんどん変わってきています。
WEB制作の案件についても、まるで現実の建築の如く、大型マンションもあれば一戸建てやプレハブだってあります。
現実的にはこれらすべてに通じていくことは難しく、制作会社/個人単位で得意とする案件のサイズや業種、地域があります。
サイトの企画~制作も、アクセス解析に基づく改善も、SEOや広告運用、SNS運用も全部お任せ!というのは大きな広告代理店ならともかく、いち制作会社で全部網羅し質の高いアウトプットをするのは非現実的です。

今のご時世、どんな会社もサイト自体は持っていて当たり前で「ただ作る」というたぐいの案件も減っています。
いかに既存WEBから収益を生み出すか、いかに既存事業とWEBの相乗効果を生んでいくか、というビジネス面での成果を問われるケースが多くなり「ただ作るだけでは食えない」状況に拍車がかかっています。

WEB制作シーンでのデザインは、エンジニアリングとの融合が進んでいます

WEBサイトの大規模化や、顧客側による管理更新の容易性への要求が増すにつれて、静的なページを書き出して都度サーバにアップするのではなく、アクセスに基づき動的にページを生成・表示する仕組みが主流になりつつあります。
また、今や完全に逆転したスマホなどのモバイル端末からのアクセスに対応するため、複数の異なる大きさの画面での見え方/操作感も考えながら、サイトデザインを行う必要があります。

10年前のWEBデザイナーは、まだ自分でWEBサーバを立てて、冊子づくりのようにページ単位でデザインを作り、コーディングの上ちまちまアップしていました。
ところが、現在は変動する表示環境を視野に入れ、それに耐えうる情報の与え方を整理設計した上で、それを実現するコードの書き方を考えることが求められます。
こうした状況から、WEBデザイナーはまずビジュアルデザインをメインで担当するデザイナーと、それを実現するコードを記述するコーダーに分化し、さらにコーダーはブラウザに読まれた段階での処理系・画面周りを主に担当する「フロントサイドエンジニア」、ブラウザに渡すデータの制御やトラフィックの処理に対応する「サーバサイドエンジニア」の二系統に分化してきました。

一口に「WEBデザイナー」と言われても、何をするのか、何ができるのか、細かくいってもらわないと程度が全く分からないのが最近のWEB業界です。

WEB業界の中でも、EC界隈は独特の世界を築きつつあります

ECサイトの運営会社の多く、ざっと9割9分は中小零細企業、多くが本業(実店舗や製造)と兼務で、WEB専従者は「いない」か数名程度であることがほとんどです。
そうした中、多くの会社は自社サイトをASPカートに委ね、あるいは楽天やamazonに乗っかることで凌いでいます。
自社での制作や更新は、画像やバナー、文章のみに留め(即ち、技術的な対応を外部へ移管し)、前述のハイスペックなデザイナーやエンジニアを抱えず、統括的なポジションを除きパートタイマーの方などに委ねて回して人件費を抑えます。
肝心の集客やマーケティングなどの戦略部分は、経営者が専門のコンサルや代行会社に外注し、彼らの言いなりのケースが多くなっている。
これが多くのEC運営事業者の実態です。

より競争環境が厳しさを増す中で、多くのEC事業者は戦略・マーケティング機能を組織の内部に持ちたいという悩みを持っています。
反面、人材の供給は全く追い付いていません。

この状況を踏まえ、EC企業のWEB担当者として人材価値を高めていくためには、デザインやコーディングのスキルはほどほどに(ASPやモールの制約が大きく、技術を磨く幅が少ない)、自社ビジネスを理解した上で経営者と対話し、戦略をサイトやSNS、各種メディアに落とし込んでいく動きができること、コンテンツの力(ビジュアルやコピーライティングなど)で見込み客との接点を作れることが重要となっています。

まとめると、EC界隈は

制作スキルは外部システムに依存するため最新/高度なものを求められない
・モールなど所与の枠組みの中で、本質的なコンテンツの力、画像やコピーの質での勝負になる
・売上やアクセスなどの計数管理がしやすいので、戦略的な動きがとりやすい(意外とロジカル)
・もっと突っ込んで言うと、商品と顧客への愛情が勝負

一口にWEB業界と言っても、ECのWEB担当者は言わばショップの接客担当、店員さんなのでちょっと独特です。
少しでも求職者の皆様の参考になれば幸いです。
 

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