クックのこと

初めて家に来たのは小学校4年の夏。

犬嫌いの私がなぜか「犬を飼いたい」と言い出し、犬好きの母はそれならと歯医者帰りの私を連れてペットショップに立ち寄った。
小さなケージに「可愛がってくれる方、無料で差し上げます」という札とともに、白と茶のが仔犬が座っていた。翌日父が「クック」と名付けた。

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子供のくせに警戒心が強くて、はじめは人の手を噛んでばかりいた。

なかなかなつかず、抱っこされるのが大嫌い。そもそも、体を触られるのが好きではないタチで、足を握ると暴れだす。飼い主に腹を見せて寝転がる「服従のポーズ」も、一度もとったことがない。
散歩の途中に放すと(実家の周りは畑と原野ばかりでして)、自分が遊び疲れるまでは決して捕まらない。
そのくせ、必ず目の届く範囲にいて、自分が置いて行かれてないかを逐一確認する。少しでも飼い主の姿が見えなくなると、狂ったように探し回る。

ある朝、鎖が切れて小屋の前にいなくて大騒ぎになった時も、逃げようと思えば逃げられるのに、玄関の前で呑気にあくびをしていた。それも一度や二度ではない。

捨て犬としての「出自」がこういう性格にさせたのか、生来のものなのか知る由もないが、クックはなんだかよくわからない距離感で、しかし確実に家族の一員となっていった。

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我が家は昨今のペットブームのように犬を擬人化して服を着せたり、ビデオ撮ったりケーキあげたり家の中入れたりなどということは一切してこなかった。ご飯は固いドックフードと、黙らせるとき用のコンビニの100均ビスケット、たまに残飯をあげていたくらい。雷が鳴ろうが地震が来ようが基本的にはいつも通り庭で待機。
台風が来ても「じゃ、あとは頑張れよ!」で雨戸をぴしゃり。およそ「大切にされていた」とは言ってあげられない扱いであった。(一昔前の犬は皆こんな生活だったと思いますが)

しかし、その甲斐なのか?強かった。今年は17歳を過ぎ、もう人間の歳にしたら80歳台後半。毎年夏になると「今年の夏は無理だろう」「いやでももしかすると」…こんな会話が、もう何年も続いていた。

病気だってした。巨大な腫瘍を摘出する大手術もした。その時はさすがに死んだと思った。でも、乗り越えた。だから、その後も何度か危ない時期があったけど、こいつはもしかすると天性の長寿犬なんじゃないのか、もしかしたら20年行っちゃうんじゃないか、そんなことも思っていた。

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結婚式を4日後に控えた11月1日の夕方。
仕事で全員外出していた実家の玄関先で、人知れずその命は消えていった。
母が最初に見つけた時は、まだ温かかったそうだ。

この1、2年は急速に老衰が進み、時々もう気が狂ったように回転したり、痛がってのたうち回ったり、首が曲がって元に戻らなくなったり、ご飯を自力で食べられなくなったり、それでもまた復活したり、とにかく壮絶だった。もう要介護認定4くらいは余裕で取れそうで、本来ならば動物病院に入院させて、最大限ケアしてもらうべきだったのかもしれない。

ただ、そうやって寿命を数か月伸ばしてあげられたところでそれが本人(本犬?)の望むところだったのか、それは決してわからない。

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本当は苦しくて苦しくて、早く死んでしまいたかったのかもしれない。
それならば、なぜあそこで水を飲んだんか。食事をしてまた歩き始めたのか。
足元もおぼつかず、自分の糞にまみれ、どんどんみすぼらしくなって、それでも、生き続けた。犬という存在に、ほかに選択肢はないのだろう。

あるいは、それが命というものなのかもしれない。
楽しい、美しいだけじゃない。汚いことも苦しいことも、それによって周囲が惑わされたとしても、それでもそこに在り続けようとする意志が、命の本質なのかもしれない。

だんだん自由の利かなくなっていく身体、遠くなっていく耳、動かなくなる足、そういう「命あるものの当たり前」を、私たち家族にまざまざと見せつけ、クックは天に昇って行った。

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あの日、あの時、あのペットショップに行かなければ、その犬の運命はどう変わっただろう。
家が違えば、もっと良い待遇でぬくぬくと育てただろうか。
そのまますぐ保健所で殺処分されただろうか。

しかしいま、一匹の犬のもたらした体験は、一人の少年の人格形成を助け、一つの家庭の和を保ち、残された者はその経験を継いでいく。

命というものは、かくも儚く、かくも偉大だ。

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