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50歳を過ぎてからの再出発と息子の心情

日本の完全失業率は4.5%。多いと見るか少ないと見るか。
この数字は、読んで字の如く労働人口に占める失業者の割合なのだが、「失業者」というのはハローワークに求職登録しているしている人数だから、潜在的にはもっとたくさんの人が職にありつけていないのではないかと思う。とはいえ、10%超えが半ば当たり前の諸外国と比べたら、我らが日本国はまだ優秀と言えるだろう。
しかし、この100人中のたった4.5人に、私の両親は同時に陥ってしまった。
私が中学生くらいの頃だったか。父は、勤めていた会社の方針で、フランチャイズオーナーとして独立し、小さな店を任された。食品を扱う店で、決して繁盛はしている風ではなかったが、父は外販や配達時の訪問販売を駆使し、途中から母も外のパートをやめ、店で共に働き、私を私立の大学に通わせてくれた。
地元を出て、たまに電話をかける度に「いいこともなきゃ悪いことばっかだ、がははは!」と笑い飛ばして、もうずっとそんな感じだったのだが、どうもそれもにっちもさっちも行かなくなってきた。自店舗だけでなく、あれよあれよという間に親会社の方も急速に業績が悪化し、メーカーへの支払いが滞り、入荷商品が止まるなど、ある意味で店としては行きつくところまで行ってしまった。フランチャイズ店はさながら兵糧攻めの憂き目に合い、父は独自ルートで仕入を試みるなど踏ん張ったが、ついにこの春、20年近く近く続けた商売に見切りをつけた。
今年のゴールデンウィーク、地震の片付けボランティアに行った後、店の片付けの応援に出向いた。
高校が近くて、学校帰りによく寄った。趣味の自転車で遠出したときは、いつも最後の休憩ポイントだった。学園祭の時には、クラスメートと模擬店で売るアイスクリームの仕込みをやった。忙しい売り出しの最中は、家に帰って炊事をする時間が惜しく、一家揃って晩御飯を食べることもあった。店は、第二の我が家だった。
一度も動かしたことのなかったような棚を解体し、壁に深く打ち込まれた釘をはずし、まだ使えそうなものは片っ端からリサイクルショップに引き取ってもらった。徐々に空になっていく店を、黙々と片付け続ける父の背中を見るのは辛かったが、それ以上に、いやもうまったく別の次元で、父は辛かっただろう。
京都へ帰ってからも、日本は暗いニュースが多い。震災の傷跡や目処のつかない原発事故復旧、遅々として進まない国会。そんな中明らかになった今年上半期の自殺者数1万5千人超えのニュース。14年連続の3万人超えへ向かってまっしぐら。あれほどの大震災の犠牲者が2万人強なのに、である。その中でもっとも高い割合を占めるのは50歳代男性、うち6割が無職…。未遂を含めるとその数は5倍とも10倍とも…こんな話は聞きたくなくても耳に入ってしまう。
ある日、勤務終了後、携帯にこれまでに数えるほどしか入ったことのない父方の実家からの着信が入っていた。なんとも言えない緊張感とともに、おそるおそる電話をしてみると、祖母が間違い電話をしただけということだった。そのまま床にへたり込んだ。実家へ電話し、予定のない再来週の週末に帰省することを告げた。
久しぶりに実家へ帰ると、机の上にはホットプレートに広げられたアサリの山。そして、出てくるトマトやキュウリなどの野菜がみな父が自分で獲ってきたり育てたものだと聞いたらなんだか拍子抜けして、笑えてしまった。狩猟採集とプチ農耕のあわせ技。生きるということにおいて、父は数段うわてだ。
母のほうは、一足早く再就職を決め、小さな町工場に勤めだしていた。父は、苦戦しているようで、応募しても会ってもくれないと嘆いていた。選考書類はハローワークの人も太鼓判を押してくれているのに、年齢を告げるだけで断られてしまうという。なんだか新聞で読んだルポの世界みたいだ。でも、よくよく考えれば、ルポは現実の話。ノンフィクション。そのひと続きの現実が自分の目の前に現れるか現れないかは、本当に紙一重だ。改めて「平穏」という奇跡のありがたみを思う。
帰り、駅まで送ってくれた車から降りる間際に、父に先日社長にいただいた「夏の寸志」(私も転職組なので、ボーナスは次からです)を手渡したら、受け取りを拒否された。しかし、すぐに母が「ありがとう、気持ち。」といって受け取った。父はそれを不満そうに見た。そんな様子を横目に、車を降りた。「また夏に帰ってくるから!」と、足早に駅舎へ歩いた。
昨日、父からメールが届いた。
福祉の仕事が決まったこと。
我が家の老犬は生きていること。
そして、もう心配しなくていいぞ、と。
5月の片付けの最中に、不意にパートさんに仕事を教えるための資料(ノート)を見た。
「仕事はお金のためにする作業なんだけど、それだけじゃない。」「仕事を通じて、お客さんに喜んでもらって、自分が成長する。」「すると、世の中がよくなる。自分の仕事に、人生に、意味が生まれる。」父のいつものきれいな字で、そんなことが書いてあった。被災地で泥の中から写真を拾ってたときに出なかった涙が、こみ上げてきた。
どんなにがんばって仕事をしていても、報われるとは限らない。
でも、少なくともあなたの息子は、あなたを心の底から尊敬している。
50歳を過ぎてからの父の新しいスタートが、順風満帆とは行かなくても、些細な喜びや発見に満ちた幸せな日々でありますように…。
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↑夏休みスペシャルな長文でした。

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