外国人観光客憧れの場所・稲荷山を歩こう

2019年まで、世界的に利用者の多い観光ガイドアプリの「トリップアドバイザー」で6年連続国内1位だった伏見稲荷大社(以下、伏見稲荷)。
2020年は、新型コロナの影響からか、ついに首位から陥落しました。

京都在住の身としては、恐ろしいほどの混雑のイメージがついてしまっていたお稲荷さん界隈。
理由はともかく、外国人観光客が皆無となれば空いているかも、との淡い期待を胸に、出かけてきました。

■伏見稲荷が人気なわけ

外国人観光客の伏見稲荷人気の要因は、千本鳥居の「インスタ映え」なのは、疑う余地さえありません。
世界中どこを見渡しても、他にはない景観というのは、それだけで人を惹きつけますよね。
しかし、伏見稲荷の観光地としての魅力は、それだけではありません。

個人的には、伏見稲荷を唯一無二の存在たらしめているのは、稲荷山全体という広い境内をぐるっと回れる、気軽なウォーキングコースだと思います。
スニーカーで歩ける整備された道、いい具合の間隔で出てくる茶店、無数に点在する祠、単純往復ではないコース、頂上に到達する達成感。
全域を巡っても4kmしかありませんから、2時間半もあれば充分です。

体験としての密度がこれだけ高いのに、京都駅から電車で5分、駅からは徒歩0分、ほぼ無料、しかも24時間楽しめるというのですから。懐が深すぎます。

現実には、24時間と言っても夜は怖いし、拝観料は無くてもお賽銭を入れないわけにもいかないし、飲み物の自販機は高度とともにインフレしていくので、出費ゼロというわけにはまいりませんが。

■あの鳥居は何なのか

それにしても、山中のおびただしい鳥居の数には、毎度圧倒されます。
ご存知の通り、この鳥居達は、全国の神社と同様、神社が建てたのではなく、参拝者が奉納・建立したものです。実際に、建てた人の名前や時期が書いてあります。
有名人、有名企業に加え、全国各地の一般の方の名が延々と出てくるため、真面目に見ていると面白く、なかなか先に進めません。

ちなみに、この鳥居を建てるためのお値段は公表されており、最低でも20万円強から、大きなものだと100万円を超えてきます。

参考:鳥居奉納の案内/伏見稲荷大社

表中の「号数」は、3cm(一寸)をかけた数字が基準で、5号ですと直径15cmの柱、10号ならば30cmということです。ケーキや花火玉と同じです。

木でできた鳥居の耐用年数は意外と短く、山内を見て回っても平成一桁台は稀で、昭和生まれは皆無です。一般には4~5年と案内され、実際、一日あたり3本程度が建て直されているとのこと。
ちなみに、建てようと思ってすぐに建てられるものではなく、半年から長ければ5年ほどの空き待ちになることもあるようですよ。

■なぜ鳥居はこれほどまでに増えたのか

1500年を超える神社としての由緒や成り立ちは公式サイトに譲るとして、この鳥居を建てる風習は、明治以降に現れたもので、神社の歴史からするとごく最近の話です。

というのも、江戸時代までの稲荷山は幕府の直轄地で、一般の人が入ることができませんでした。ところが、神仏分離や上知令のどさくさで、明治以降は自由に立ち入りができるようになり、稲荷信仰のブームとともに、急激に塚や
鳥居が増えた、いわば「市井の人々に勝手に建立されたものが溢れてしまった」だけなのだとか。

そういうわけで、世界に誇る?現代の伏見稲荷の姿というものは、ありがたいものとか、誰かが計算ずくで作り上げたものではなく、信心深い庶民が自発的に鳥居を建てまくった結果、歯止めが利かなくなってしまっただけ、とも言えます。
(もちろん、現在はすべて神社の管理下です。)

さて、気になるのは、1万本ともいわれるこの鳥居の本数です。
実際に調べた方がいらっしゃいます。

参考:伏見稲荷大社にある、千本鳥居の本当の数を計測してみた
(chinuさん・個人ブログ)

なんとも、素晴らしいフィールドワークです。
実際に行くとわかりますが、これは簡単にできできることではありません。
息子も数えていましたが、わずか50本で挫折していました 笑

■伏見稲荷の現状

2020年10月の日曜日に出かけてみた感想ですが、空いています。
朝9時半頃、千本鳥居で誰もいない写真を難なく撮れるというのは、昨年では困難だったと思います。
ただ、4月、5月の頃と比べれば、街全体としても、観光の方は戻ってきているようにも感じられます。
伏見稲荷は野外ですし、奥へ行けば人も減り、密にならない観光地としても有力です。

さて、伏見稲荷について、あえて「観光の文脈」のみで取り上げてきましたが、あくまで、本来の姿は「信仰の場」です。
外国人観光客が押し寄せる前、ほんの7~8年前の稲荷山は、初詣の時期を除けば、静かなものでした。
登山道の脇にある祠で、ひっそりと般若心経をあげるおじいさんといった、
神仏習合の名残が見られる貴重な場でもありました。

そういったピュアな部分も、節操のない鳥居群など下世話な部分も全てひっくるめた「稲荷信仰」のなんたるか、すなわち、時に神にすがりながらも、繰り返す疫病も災害を幾度となく乗り越えてきた「庶民のパワー」を感じながら、ぜひ京都のお稲荷さんを歩いてほしいと思います。

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