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祇園祭のごみと皿

4年ぶりに祇園祭の話題です。
今回は、祇園祭の「ごみ」について。

え?ごみ?
という反応は無理からぬことで、決して歴史や見せ場の話ではありません。
ただ、次代に末永く祇園祭を引き継いでいく上で、考えずにはいられないテーマでもあります。

■祇園祭(宵山)期間中のごみの量

ずばり、50トンです。

一家庭分として換算すると、約55年分のごみがたった二晩で出ています。(※1)
では、その内訳は何かというと、ほとんどが露店や商店で販売される食べ物の容器・食器類と、ペットボトルや缶、そして瓶です。

このごみ、祇園祭の本来の行事・神事の中ではほとんど出ません。
というのも、山鉾にしてもお神輿にしても、衣装も資材もほぼ再利用で、修繕しながら大事に使うものだからです。
近年、祭が観光化され、人が集まることを当て込んだ商売が肥大化し、ごみ問題が顕在化したのです。

休日ともなれば50万人が集まる祇園祭の宵山ですが、人並み去った翌朝には至るところにごみの山。
それを片付けるのは、露店で儲かるわけでもない、近隣の一般市民という不毛な状態が長く続いてきました。

■リユース食器の導入

こうした状況に異を唱えたのは市内のNPOでした。
2014年には行政や露天商組合、清掃事業組合さえも巻き込んで「祇園祭ごみゼロ大作戦実行委員会」を組織し、リユース食器の導入に踏み切りました。
その数、のべ21万食。

リユース食器は、00年代後半から音楽フェスや学園祭などで見られるようになりましたが、数十万人規模の来場者がある行事での導入は、前人未到の大事業でした。
その後も5年間、毎年継続しています。今年も続行です。

さて「リユース」とは、日本語で言えば単なる「再利用」です。

環境に良い活動と言えば、真っ先に思い浮かぶのは「リサイクル」だと思いますが、これは我々に市場経済由来の歪な消費者教育が行き渡った結果に過ぎません。
CO2削減やごみ減量という観点から言うと、リサイクルは全く優れた方法ではありません。

例えば、ペットボトルを想定すると、リサイクルは回収、分別、洗浄、溶解、再成形、再流通と、すべての過程でCO2が発生します。
これが再利用できる瓶ならば、回収、洗浄、再流通だけ。水筒ならば洗浄だけで済むわけです。

とは言え、皆に皿持ってこいと言っても無理ですし、次の食べ物を買うために洗い場に皆が集まればすごいことに…というか、そんな洗い場、用意できるはずがありません。

そこで、委員会では、露店で再利用できる食器を使って食べ物を提供し、使い終わった皿はゴミ箱ではなく事務局へ返してもらう。
返ってきた皿は後日まとめて洗浄・消毒し、また別のイベント会場や来年の祇園祭で再利用する、という仕組みを考えたのです。

■ボランティアの現場から

仕組みを考えたは良いけれど、それを実践するとなると大変です。

多くの来場者は、自分が露店で買う食べ物が乗っている食器にまで意識を払いません。
リユース食器は再利用できるので強度がある=それだけ沢山の資源を消費して製造されているので、1回で捨てられてしまったら使い捨て容器利用よりも環境負荷は高まり、活動の意味がなくなります。

すなわち、何よりも食器の回収や、返却を促すことが重要です。
それに応える仕組みとして、回収の拠点となる「エコステーション」=モノは言いようで、要は有人監視下のごみ箱&食器回収箱を、露店の集中するエリアに数十か所設営します。
また、ごみ袋とトングを持って歩き回る遊撃部隊も組織します。

この活動の主体となるのが、2千人規模のボランティアです。
ボランティアは一般公募で、主に学生、社会人が無報酬で参加しています。
(私が直接聞いた限りでは、単位として認定される学生も多いですが 笑)

私は地元民なので、人手が薄い夜間担当にほぼ毎年入ってます。

会社から帰って夕食を取った後、21時頃までエコステに入って分別の手助けをしたり、来場者に道案内したりして過ごし、22時頃からは各エコステのごみや資材を拠点まで運ぶ撤収作業に従事したり、沿道に放置されたごみを回収したりし、日付が変わる前には歩いて帰ります。

男子大学生達と浴衣のねーちゃんウォッチングしたり、外人さんと身ぶり手振りで絡んだり、おっさん同士でゴミハンティングしたり、志が低くても?楽しいですよ。
ごみの分別行為そのものは来場者自身にしていただくので、基本的にこちらは分別の基準を示すだけです。
「缶あちら」「串そちら」「おおきにすんまへん!」とでも言っていれば、成立します。というか、その位、ユニフォームやサイン・パネル類、エコステの配置、会場内外での広報含め、総合的によくデザインされています。

リユースカップの青いハートのロゴマークなんかは、持って帰りたくなるほどではなく、かと言って捨てるのは憚られるような、絶妙なデザインとは何かを一流デザイン事務所が練りに練ったんだそうです。
https://jmp.c-rings.net/u.aspx?c=13hgenxqM15idN1UvspCSAtWuHI%253d

実際、意外と皆さんマナーが良く、分別を渋られることもなく、対来場者で対応に困るようなややこしい場面に遭遇したことはありません。
基本つっ立って呼びかけてるだけですが、「ありがとー」と言われることがほとんどです。

むしろ、ボランティア歴の浅い年配の方、普段から指示待ち体質、ウエメセ(上から目線)体質の方が、ボランティアリーダーに指示がないだの、見通しがないだのと説教している様子をたまに目にして困惑します。

リーダーさんも多くが経験の浅いボランティアだし、指示系統もあるので勝手なこともできず、大目に見てやって欲しいです。仕事でもないんだし、自分で考えて次の一手を提案したり、助けたり、気楽にやればいいのです。

それも含めて、こういう多種多様な人間が即興でチームを組んで動くゲリラな現場が体験できるのは、マネジメントやリーダーシップの学習教材として大変素晴らしいものだと思います。
首都圏や九州など遠方から、観光も交えて参加される方も多いです。

活動の成果という面では、目に見えてごみは減り、2014年以前の廃棄物量の単純比較で概ね2割、多い年は4割程度減らせています(曜日や天候により来場者総数が大きく変動するため、単純比較は難しいところですが)。
遊撃隊が片付けるのでごみの散乱も減り、近隣住民の恒例・宵山明けの朝の掃除がとても楽になったそうです。

■祇園祭に限らず、無闇なリサイクルを見直す時だ

今年に入ってから、海洋汚染に伴うプラスチック規制が話題になり、スタバやマクドでプラ製ストロー排除に向けた動きがありました。
また、中国や東南アジア向けに、日本のプラスチック容器包装ごみが不正輸出され、問題となっていることや、相次ぐ規制で行く宛を失っていることをご存知の方もいらっしゃると思います。

それで、結局燃やしたりしてるんですよ。
せっかくあなたが洗ったり分別したりしたプラごみ。
意味ないですよね。

これが「リサイクル」の持つ影の部分、本質的な意味で環境負荷低減につながらない矛盾だと思います。GDPには寄与するというのがまた、業が深い。
そういうとこだぞ、日本。

リサイクルだけじゃなく、リデュース(減らす)、リユース(再利用)をまずは考える。
ごみになると分かっているものを、安易に買わない、もらわない。
こんなことを意識しながら、今度の祇園祭は、リユース食器にも注目してみてください。

※1…平均世帯人数2.5人、1人あたり1日1kg換算

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